期待20 不安80

 川口市では今年度から全中学校の英語の授業でラウンドシステムというものが採用されています。私も名前だけは以前から知っていましたが、英語の新しい学習法らしいです。

 詳細はどこかに載っていると思いますが、数年前に横浜の中高一貫校の先生が始めてそれが効果があったということで徐々に全国に普及しているらしいのです。らしいらしいと書いているのは細かい成果が調べても出てこないのです。宣伝のためでしょうか、いい情報は出てきます。が、はたしてそれを鵜呑みにしてよいのか。ちなみにこのラウンドシステムというのは現在、おもに光村図書の教科書で採用されているようです。ご丁寧にラウンドシステム用の副教材まで発行されており、それがなかなかのお値段です。もちろん税金投入です。

 20年近く前に百マス計算というのが全国に広がったことがあります。あれは紙さえあれば他に何も必要ありません。が、このラウンドシステムというのはいろいろと備品が必要なようです。で、川口市の教育委員会はどこまで深く調査をしたのか分かりませんが、今年度からこれを採用し教科書会社も変更しました。なぜ今まで長年使っていた東書を変更したのか不思議に思っていた人もいると思いますが、理由はこれに違いありません。

 説明だけ読むと、画期的で夢が広がる勉強法です。私も新しい勉強法にチャレンジするのはいいと思います。が、市内の全中学校一斉に取り組むことには違和感があるし、もしうまくいかなかった場合はどうするのでしょうか。はっきりいって光村の教科書は文法を体系的に教えるには非常に不都合なことだらけです。このラウンドシステムありきで作られた教科書です。教科書は最低4年間は同じものを使います。2024年までに成果が見られればいいのですが。誤解を恐れずに言えば、今年の川口市の中学生は実験台ということになります。現に塾生に聞いても学校ではほとんど文法は習わないし、書くことも少ないようです。 中1の今回の中間テストでは名前とアルファベットが書ければいいそうです。あとは選択問題なのでしょうか?

 おそらく学校の先生方もこれまでの指導法をガラッと変えるように指示をされて混乱されているのではないかと思います。ちなみに川口市以外で英語で光村を採用している中学は、埼玉県内では以前からラウンドシステムに取り組んでいる熊谷市をはじめ本庄市・行田市・加須市など8市3町です。埼玉県は市だけで40あるのでこれは少数派です。ちなみに熊谷でも称賛する声がある一方で、すでに不安の声も見られます。

 まだ始まったばかりで暖かく見守りたいところですが、今思いつく不安点をあげるとすれば

・そもそもの始まりの中高一貫校の生徒と同じ成果が見込めるのか。
・文法を教えないで大丈夫なのか。
・定期テストはどうやって作成するのか。

 1つ目については最初に実践された中学は横浜の中高一貫校。つまり中学受験をしている生徒です。ちょっと調べたら高等部は毎年東大をはじめ国公立に数十人合格しています。つまり、そこそこの学力があったから理解できたのではないかということ。

 2つ目についてはたしかに何度も繰り返し学習することで、英文に慣れるとは思います。ただ、それは教科書の文章を暗記するだけにとどまらないのかということです。模試や入試は記述が中心です。文法が分かっていなくてはたして解けるのでしょうか。先の横浜の中学は高校入試の心配がありませんが、川口市の中学生は新設校の生徒以外は全員高校入試があります。

 3つ目については、時期的に思いついたものですがたとえばラウンド1だけだと定期テストは作成できません。おそらく出版社から定期テスト用のマニュアルも用意されているでしょうが、入試などとは似てもにつかないテストになると思います。

とまあ、いろいろ書きましたがこれがすべて杞憂に終わればいいと思っています。もし今後塾生の英語力に不安要素が見られたら、こちらできっちりと教えたいと思います。しばらくは様子見になりそうです。